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2006年11月30日(木) 高野悦子『二十歳の原点』読了。

 ある独りの女学生が1969年6月24日、鉄道自殺を遂げた。死後、その女学生の日記が父親の手によってまとまられ、『二十歳の原点』というタイトルで出版され、ベストセラーになった。この本がどうしてベストセラーになったのか。この本(日記)の著者が、「自殺」したからである。自殺に至るほどの心の葛藤、内面の苦労とはどのようなものであったか。人は知りたいと思うし、理解してやりたいとも思う。たんなる「事故死」で終わっていたならばこれほど売れることはなかった。(自殺ではなく睡眠薬の飲み過ぎによる事故死ではなかったかともいわれるが、販売戦略からみれば明らかに「自殺」にしておいたほうがいいに決まっている。)
 この程度の日記なら、普通の女学生にも十分書ける内容のものであると思う。それがどうして人の心を打つのであろうか。作者は「自殺した」からである。自殺した人が書いた文章は、後から読むと、読み手を感傷的にさせる。(このことは、この著者が現在も健在であると思って読めばすぐ分かることだ。)
 悲しいことではあるが、自殺という行動、自殺という結果があってはじめて、人は自分のほうに目を向けてくれるのである。

 

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